■辺野古基地建設の埋め立て 知事の公有水面埋立承認取り消に沖縄防衛局が行政不服審査請求したのは不適法(2015年10月23日)

沖縄県名護市辺野古の埋め立て承認問題での行政法研究者の声明

 周知のように、翁長雄志沖縄県知事は去る10月13日に、仲井真弘多前知事が行った辺野古沿岸部への米軍新基地建設のための公有水面埋め立て承認を取り消した。これに対し、沖縄防衛局は、10月14日に、一般私人と同様の立場において行政不服審査法に基づき国土交通大臣に対し審査請求をするとともに、執行停止措置の申し立てをした。この申し立てについて、国土交通大臣が近日中に埋め立て承認取り消し処分の執行停止を命じることが確実視されている。

 しかし、この審査請求は、沖縄防衛局が基地の建設という目的のために申請した埋め立て承認を取り消したことについて行われたものである。行政処分につき固有の資格において相手方となった場合には、行政主体・行政機関が当該行政処分の審査請求をすることを現行の行政不服審査法は予定しておらず、かつ、来年に施行される新法は当該処分を明示的に適用除外としている。したがって、この審査請求は不適法であり、執行停止の申し立てもまた不適法なものである。

 また、沖縄防衛局は、すでに説明したように「一般私人と同様の立場」で審査請求人・執行停止申立人になり、他方では、国土交通大臣が審査庁として執行停止も行おうとしている。これは、一方で国の行政機関である沖縄防衛局が「私人」になりすまし、他方で同じく国の行政機関である国土交通大臣が、この「私人」としての沖縄防衛局の審査請求を受け、恣意(しい)的に執行停止・裁決を行おうというものである。

 このような政府がとっている手法は、国民の権利救済制度である行政不服審査制度を乱用するものであって、じつに不公正であり、法治国家にもとるものといわざるを得ない。

 法治国家の理念を実現するために日々教育・研究に従事している私たち行政法研究者にとって、このような事態は極めて憂慮の念にたえないものである。国土交通大臣においては、今回の沖縄防衛局による執行停止の申し立てをただちに却下するとともに、審査請求も却下することを求める。

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