2015年県予算案について(2015年2月17日)

 滋賀県が発表した2015年度県予算案について、党県委員会の見解を紹介します。

2015年度県予算案について           日本共産党滋賀県委員会県政対策委員会

①安倍政治に「呼応」し、公共事業優先をひきついだ予算案

 三日月知事の新年度予算案は、一般会計5385億円、前年比で4・5%増、2年連続の5千億円超となった。

 しかしその内容は、工業用地の先行取得、スマートインタチェンジ建設、高校統廃合、学習船うみのこ建造、県近代美術館や琵琶湖博物館リニューアル、国民体育大会準備など、前県政の公共事業型予算(注1)を引き継いで、投資的経費を急増させたが、今年度予算の性格をそのまま継承し、また安倍暴走政治の予算編成方針に「呼応」すると自認したものとなった。

 県は、予算案について、「国の『地方への好循環に向けた緊急経済対策』に呼応」「地方消費税の税率引き上げによる増収分は、全て社会保障の充実・安定化に活用」などと、事実にも反して(注2)、安倍政治を美化した。

 それは実際にも、雇用対策費や子どもの医療費軽減事業、生活困窮者のセーフティネットも削るなど、県民の暮らしを国の悪政から守る「防波堤」となるべき自治体の役割を放棄したものとなった。

 農業水産費の34・7%の伸びは、米価暴落やTPPから農家と農業を守るものではなく、農地を集積する農地流動化促進対策費が前年比で5倍も伸びたためである。これは、県内の大規模農家の育成という方針から、安倍政権の農政「改革」、家族経営の切り捨て、TPPの先取りへと質的に変化したものである。

 県民の安全を確保するための防災費は、完成した県危機管理センターの整備のための費用に費やされ、地震や原子力防災対策、消防団強化などは軒並み削減された。原発のない社会をめざすためにとされてきた再生可能エネルギー導入推進費も半減した。

 これらは、昨年の知事選で、自民党型政治への復帰を拒否した多くの県民の期待を裏切るものである。

②県外企業の「呼び込み」のための補助金制度を維持し、県内企業支援との格差も広げる

 県の経済対策にかかわる予算案は、県外企業の「呼び込み」だのみと言わざるを得ない。「Made in Shiga」を銘打った新たな企業誘致助成金制度が設けられ、誘致時期だけでなく、その後の設備投資に対しても助成金を支払うなど、工場立地指導対策費はこれまでどおり14億円を維持した。

 企業誘致策は必要であるが、滋賀に進出する企業は、交通の便利さなどを進出の動機としており、補助金によってではないことが県の調査でも示されている。

 しかし県外企業の「呼び込み」のいっぽうで、県内中小企業への金融対策費は、この3年間に大きく減らされてきたが、さらに33億円という大幅な削減がおこなわれた。また、技術開発支援も「ちいさなものづくり」の中小企業向け事業は390万円で、大手企業向け「新しい産業づくり」推進事業費は1・1億円となっている。

 この「呼び込み」政策は、雇用分野にも波及している。緊急雇用創出事業が14・2億円から1・4億円に減ったなかで、県の独自施策だったヤングジョブセンター、女性の就労トータルサポート事業、母子家庭等就業・自立支援センター事業などの雇用安定対策費は0・9億円と、前年の1/3にまで削られた。

 県が「戦略産業」とみなす企業への「戦略産業雇用創造」2・2億円とは大きな違いで、人材の確保をもとめる中小企業への支援とも大きな格差がつくられている。

 福祉・医療分野の予算も広範囲に削減された。低所得者自立更正融資対策費1・2億円は10億円もの削減で、国の制度改定に向けて今年度予算が事務支援費などが増えたことによるものだが、それ以前の3億円水準から、1・2億円にまで引き下げられたことを見逃すわけにはいかない。

 生活保護費はほぼ10億円の通例の予算を確保したが、ここ数年間は毎年7~8000万円の自然増がはかられていたことからみれば、新年度の5000万円削減は、まさに国の生活保護改悪をそのまま持ち込んだものと言える。これらは生活困窮者の最後のセーフティネットを断ち切るものである。

 65歳~69歳の医療費窓口負担を倍化した今年度の福祉医療費削減は、予算案でも削減がそのまま継続された。

③子どもの医療費、国保引き下げもなく「人口減少を見据える」

 予算案は、「人口減を見据えた豊かな滋賀づくり推進」を、「県政全体をつらぬく大きな課題」の第一にあげた。

 しかしその中身は従来の事業を並べただけで、特に新しい事業が盛り込まれたわけではない。人口増への決め手といわれている子どもの医療費の窓口負担ゼロの拡大、高すぎる国民健康保険税(料)の引き下げは、盛り込まれなかった。

 反対に、市町の子どもの医療費無料化制度を支援する乳幼児医療費助成は、ひき続き2000万円が削減された。待機児解消のための市町の保育所整備支援は削られ、いっぽうで民間の保育事業への助成を増額した。保育の公的責任を投げ出そうとしている国の方針にそのまま従ったものである。

 教育では、全国1の児童・生徒の増加でマンモス化がいちじるしい特別支援学校について、新設を、設置基準をという父母らの願いは盛り込まれなかった。長浜の養護学校は、高校統廃合の一環として新設予算が盛り込まれた。これは差別的取り扱いと言わなければならない。

 しかも県は、「特別支援学校在籍数の割合が全国に比して高い」とか、障害者の権利条約までもちだして、「共生社会の形成」などといって、子どもたちの緊急事態に目をふさいだ。共学モデル事業は0・2億円から0・4億円に増額している。

 原子力防災対策は、「国が定めた緊急時防護措置準備区域(UPZ)以遠においても防護対策を実施する」としたが、予算は会議費や調査費で、すでに前県政が、実効性がないことが明らかな原発過酷事故の際の湖北地域の避難計画を国に要求しつつただちにおこなう改善も持ち越された。

 いっぽうで、再生可能エネルギー導入推進費は、もともと原発ゼロ社会をめざし「爆発的な普及」をめざすような予算規模ではなかったが、それすら4・2億円から2・5億円に削減され、太陽光発電など再生可能エネルギー普及のための予算も削られた。

④35人数学級や湖西線対策など、県民の声が動かした予算も

 35人学級が小中学校の全学年に拡大された。しかし予算額そのものは今年度よりわずかながら減った。子どもと小中教員数の減少を見込み、かつ20人以下の学級を認めない制度としたためである。しかし少人数学級制度の拡大は、教育をよくするために欠くことができない制度であり、県民の粘り強く続けられてきた運動の成果である。高校まですぐにでも拡大できた制度であり、引き続き拡大を強く求めたい。

 また、強風のたびに列車が止まるJR湖西線の利便性向上対策も盛り込まれた。これは何らかの事業費ではなく、JR西日本との折衝費というべきものである。

 いずれも今後の進捗状況を見なければならないものではあるが、知事選で、「新幹線よりも湖西線を、草津線を」などの強い県民の声が実現の力となったものである。

⑤県議会議席回復で県政の転換をめざす

 日本共産党県委員会はすでに、県予算編成と県政運営について、予算の組み替えるべき根幹方向について知事に申し入れている。その財源は、これまで県民のために使うべき税金が、蓄えられてきた基金の一部を活用し、5000億円規模の一般会計を県民本位に組み替えることで生み出すことが可能である。また5億円を超える同和予算はそれ自身、ただちに削減すべきものである。

 県の新年度予算案は、前県政後期の公共事業を優先する方向を継続し、また安倍暴走政治に追随するものとなった。この予算案を県民本位に組み替えるには、引き続き、強力な県民運動と、4月の県議選、市町議選で、安倍暴走政治そのものに審判を下すとともに、県政を県民の暮らしを守る防波堤とする転換がどうしても必要である。

 そのためにも日本共産党は、多くの県民のみなさんといっそう力をあわせ、さらに確実な対案を示し、県議会議席の回復に全力で奮闘する。
                           以上

注1)前県政の公共事業型予算

 県財政の投資的経費は、2012年度77・4億円、13年度82・4億円、14年度68・5億円、15年度予算89・4億円と増加してきた。その内容には検討が必要であるが、前県政以来、自民党は公共事業の増加で知事を追及してきた。日本共産党県委員会が毎年予算要求を知事に直接申し入れてきたが、13年度予算案編成に向け60億円余をかける「危機管理センター」の無駄を指摘したことから、前嘉田知事はそれ以降、直接の予算編成についての申し入れ会談を一方的に拒否する態度をとってきた。引き続き県財政の重荷になっていることは、本文でふれたとおりである。

注2)事実にも反した安倍暴走政治の美化 県は予算説明書の中で、明確に「国の『地方への好循環に向けた緊急経済対策』に呼応」するとか、「地方消費税の税率引き上げによる増収分は、全て社会保障の充実・安定化に活用」などとしている。前者はアベノミクスの典型的な美化であり、アベノミクスが安倍政権の経済政策の全体を指すというのであれば、それはGDPの減少という明確な物差しで、アベノミクスの破たんが示されている。

 また、地方消費税についての説明は、県民の消費税の負担をいい逃れる国の主張とそっくり同じである。地方消費税は、 2014年4月1日に消費税が8%に増税されて、うち1・7%相当を地方の財源に回されているが、県は増収分が99億円であり、それが社会保障費関係予算626億円に回されていると説明している。また健康医療福祉費の増額は20億円で、前年比2・3%の伸び率であるが、歳出全体は4・5%増であって、いずれも多くは消費税増税分以外の税収に支えられている。