Q 関西電力が電気料金を値上げするという報道を見ましたが、値上げなど困ります

A どこから見ても、とんでもない話です 原発ゼロこそ、値上げしないですむ道です

 「関西電力が、電力料金の再値上げを申請する」というニュースが大きく報道されています。しかしこれは、「関係者への取材で6日分かった。近く申請方針を決め、年末か年明けに申請する見通し」というように、値上げ方針を決めた、というニュースですらありません。関電のホームページでも、そのような「お知らせ」はありません。総選挙で、原発の是非が問われているさなかに、リークで「原発を再稼働させなければ、再値上げ」などと報道させるのは、選挙への干渉というべきです。

 かりに関西電力が値上げを申請して、認可されるかどうかは分かりません。

 関電の「値上げ」は、昨年5月に家庭用料金の平均9・75%という大幅値上げに続くものです。

 報道では、高浜、大飯の原発4基を再稼働させることを計画していたが、高浜の2基の再稼働に変更したほか、火力発電燃料費や他社からの電力購入がかさみ、2015年3月期の連結純損益が4期連続赤字となるとしています。

 政府や電力業界は原発をなくすと「電力不足」が起きると脅し、それが事実で打ち破られると、「電力料金が高くなる」と言い出しています。関電は、選挙のさなかに家庭用、工業用の電気代が高くなるという、ろこつな原発擁護論を持ち出してきたとしか考えられません。関西電力が記事を否定したとは報じられていません。

 しかも、原発を再稼働させなければ、電気代が高くなるのは、避けられないことではありません。

 関西電力自身、1kwあたりの経済性(2010年)について、原発8.9円、太陽光33.4~38.3円、風力9.9~17.3円、水力10.6円、石油火力9.5~9.7円、天然ガス10.7~11.1円としています(同社ホームページ)。

 この場合の原発コストには、「事故リスク対応費用や環境対策費、政策費などの社会的費用も加味」しているといい、現在の原発に代わる主力の天然ガス火力発電コストは2030年でも10.9~11.4円と、ほぼ変わらないと予測しています。これなら原発コストとほとんど変わりがなく、少し高い部分は前回の電気料金値上げでまかなわれている範囲といえます。

 政府自身はどう見ているか。2030年の予想電気料金は、試算した機関によって大きく価格が異なります。

 地球環境産業技術研究機構(RITE)は、月額1万円の家庭が「原発ゼロだと2万円」、原発が「20~25%だと1万8000円」としています。これは、原発による発電があるかどうかは、ほとんど関係がないということです。

 国立環境研究所は、原発ゼロでも、20~25%でも、月額1万4000円で同じ、と結論しています。

 いずれも、「原発再稼働ストップなら、電気代大幅値上げ」などという理由にはならない、ということです。

 問題は火力発電です。日本の火力発電のコストは高すぎます。

 日本の電力会社は、天然ガスの買い取りを、原油平均価格にリンクする方式で契約しているため、国際的にはシェールガス開発で価格が低下している天然ガスを、原油価格高騰のために不当に高い価格で買い取っています。

 関西電力は、そういう事情を説明していませんが、東京電力の場合、天然ガスの価格は、アメリカが買い取っている価格の9倍にもなっています。これをただせば、火力発電が、原発のコストを大幅に下回ることは明らかです。

 また、再生可能エネルギーの発電コストは、普及がすすめば大幅に下がります。ドイツでは太陽光発電は10年間で8割程度となりました。風力(陸上)も2020年には1キロワット7~11円となり、現在の火力発電コストを下回る可能性がある(「NEDO再生可能エネルギー技術白書」2010年7月)とされています。

 いっぽう、関電が想定している原発コストは、「事故リスク対応費用」を「最低でも5.8兆円と見積もり、国内の原子力事業者が40年間で見合う費用を積み立てる」ことを含んでいます。

 原発からの脱却を求める国民の反対を押し切って再稼働させ、なお事故対策費も電気料金として消費者、国民に負担を求めるということではありませんか。

 原発は重大事故のさい、住民の命と健康を脅かし、地方自治体に住民避難の負担を押しつけ、避難しきれない人たちを生み、避難できた人たちもふるさとを失い、さらに琵琶湖や海洋の汚染という事態を生みます。

 しかも使用済みの核燃料の処理方法はなく、将来への重い負担を残します。

 日本の電力事業者の中でもっとも原発依存度の高い企業として、関西電力はその責任をまじめに考えているのかどうかです。

 原発差し止め訴訟では、原発の危険性を原告から指摘されても、まったく反論せず(できなかった)のに、九州電力の川内原発に続き、まだ原子力規制委員会の結論も出ていない福井県の高浜原発再稼働を「当然の前提」とし、なお「電気料金の値上げ」まで考えているというのですから。

 関電は「まえだれ精神」という、社会への貢献を創業の精神にしていると、いまでも掲げていますが、それならば、ただちに報道の真偽を明らかにし、原発に頼らない企業への脱皮をはかるべきです。