■福井原発群の再稼働差し止め仮処分請求を大津地裁が却下(2014年11月27日)

 大津地裁は27日、福井県の原発群の再稼働差し止めを求めた住民の仮処分申し立てについて、住民側の申し立ての一部を認めながらも、「保全の必要がない」として、却下しました。原告・弁護団は、「保全の必要がないという決定は、社会の一般的な認識に反する」と、強く抗議する声明を発表しました。

     (保全とは、仮処分の申し立てで裁判所が決定する暫定的な処置のこと。仮処分決定が出るのが遅れていたため、決定を待たず、住民側は原発差し止めを本裁判に持ち込んでいます)

 原告、弁護団は、もう一方で、決定が「保全の必要性がない」とした理由について、

 ①基準地震動の策定方法に重大な問題を指摘されて関西電力が説明できなかった

 ②田中原子力規制委員会委員長が「規制基準に適合していても安全とはいえない」と言っているのだから、規制基準自体に欠陥があるともいえる

 ③合理的な避難計画すらできていないことなどから、原子力規制委員会が「再稼働を容認するとは到底考え難い」

 などと、あげたことに注目して、

 住民側の主張を否定できない裁判所が、「保全の必要性の判断に逃げ込んだ」もので、「不当決定ではあるが、今後の運動に使える部分もありそうだ」と述べました。

 声明では、「却下決定ではあるが、実質的には勝訴決定に等しい」としています。

 原告団、弁護団の声明を紹介します。

原告団、弁護団声明       平成26年11月27日

 本日、大津地方裁判所は、我々の申立を却下するという不当な決定を下した。我々はこれに強く抗議するものである。

 却下の理由は、保全の必要性がないというものであるが、高浜原子力発電所も大飯原子力発電所も規制委員会の審理が進行し、近く設置変更許可がなされうると見込まれている今日において、保全の必要性がないという判断は、社会の一般的な認識に反するものである。さらに、本件決定は、最終的な判断を規制委員会に丸投げするものであり、裁判所は、市民の司法に対する期待を裏切った。

 他方で裁判所は、基準地震動の策定問題について、我々が根本的な欠陥があると主張したことに対して、関西電力が全く反論できなかったことを正当に認定し、さらに田中原子力規制委員会委員長が規制基準に適合しても安全であるとは言わないと述べたことを規制基準の合理性に対する疑問の表れであると評価し、さらに合理的な避難計画が策定されていないこと等を指摘し、原子力規制員会が高浜原子力発電所3、4号機及び大飯原子力発電所3、4号機について新規制基準に適合して再稼動を容認するとは到底考えられないと述べた。

 これは裁判所による現行規制基準や、規制委員会の審理の在り方、あるいは、再稼動に邁進しようとしている政府・電力会社の姿勢に対する根底的な不信と批判を述べたものということができる。

 本決定は、却下決定ではあるが、実質的には、勝訴決定に等しい。関西電力及び原子力規制員会は、この決定の趣旨を厳粛に受け止め、再稼動に向けての手続きをいったん停止し、規制基準の在り方から、根底的に見直すべきである。関西電力は、裁判所が認定したとおり、我々の主張に対する反論もすることができなかった。このような状態のまま、再稼動の準備手続きを進めるべきではない。ましてや、老朽化した高浜原子力発電所1、2号機の再稼動など論外と言わざるを得ない。

 我々は、本年5月21日の福井地裁判決に示された新しい流れが本流となるよう、原発ゼロ社会の実現に向けて、現在争っている福井原発群運転差し止め訴訟勝利に向けて、引き続き全力をあげることを決意するものである。