○大津市子どものいじめの防止に関する条例
平成25年2月19日
条例第1号
全ての子どもは、かけがえのない存在であり、一人一人の心と体は大切にされなければなりません。子どもの心と体に深刻な被害をもたらすいじめは、子どもの尊厳を脅かし、基本的人権を侵害するものです。しかしながら、いじめはいつでもどこにおいても起こり得ると同時に、どの子どももいじめの対象として被害者にも加害者にもなり得ることがあります。このようないじめを防止し、次代を担う子どもが健やかに成長し、安心して学ぶことができる環境を整えることは、全ての市民の役割であり責務です。一人一人の尊厳を大切にし、相互に尊重しあう社会の実現のため、いじめを許さない文化と風土を社会全体でつくり、いじめの根絶に取り組まなければなりません。ここに、いじめの防止についての基本理念を明らかにして、いじめの防止のための施策を推進し、その対策を具現化するためにこの条例を制定します。
(目的)
第1条 この条例は、子どもに対するいじめの防止に係る基本理念を定め、市、学校、保護者、市民及び事業者等の責務及び役割を明らかにするとともに、いじめの防止に関する施策の基本となる事項を定めることにより、子どもが安心して生活し、学ぶことができる環境をつくることを目的とする。
(基本理念)
第2条 いじめは、子どもの尊厳を脅かし、重大な人権侵害であるとの認識の下、市、学校、保護者、市民及び事業者等は、子どもが安心して生活し、学ぶことができる環境を整え、一人一人の尊厳を大切にし、相互に尊重しあう社会の実現のため、それぞれの責務及び役割を自覚し、主体的かつ積極的に相互に連携して、いじめの防止に取り組まなければならない。
(1) いじめ 子どもが一定の人間関係のある者から、心理的又は物理的な攻撃を受けることにより、精神的又は肉体的な苦痛を感じるものをいう。ただし、児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)第2条に規定する児童の虐待に該当するものは除く。
(2) 子ども 第4号に規定する学校に通学する児童及び生徒その他これらの者と等しくいじめの防止の対象と認めることが適当と認められる者をいう。
(3) 市立学校 大津市立学校の設置に関する条例(昭和39年条例第28号)別表に掲げる小学校及び中学校をいう。
(4) 学校 前号に規定する市立学校並びに本市の区域内にある市立学校以外の小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校をいう。
(5) 保護者 親権を有する者、未成年後見人その他の子どもを現に監護する者をいう。
(6) 市民 本市の区域内に居住し、通勤し、又は通学する者(第4号に規定する学校に通学する者を除く。)をいう。
(7) 事業者等 本市の区域内で営利を目的とする事業を行う個人及び法人並びにスポーツ、文化及び芸術その他の各種の事業又は活動を行う個人及び団体をいう。
(8) 関係機関等 警察、子ども家庭相談センターその他子どものいじめの問題に関係する機関及び団体をいう。
(市の責務)
第4条 市は、子どもをいじめから守るため、必要な施策を総合的に講じ、必要な体制を整備しなければならない。
2 市は、子どもをいじめから守るため、関係機関等と緊密な連携を図らなければならない。
3 市は、誰もがいじめを許さない社会の実現に向けて、いじめに関する必要な啓発を行わなければならない。
(市立学校の責務)
第5条 市立学校は、教育活動を通して、子どもの自他の生命を大切にする心、自他の人権を守ろうとする心、公共心及び道徳的実践力を育成しなければならない。
2 市立学校は、いじめを予防し、及び早期にいじめを発見するための体制を整えるとともに、子どもが安心して相談することができるよう環境を整えなければならない。
3 市立学校は、当該学校に在籍する子どもの保護者及び関係機関等と連携を図りつつ、いじめの防止に取り組むとともに、いじめを把握した場合には、その解決に向け速やかに、当該学校全体で組織対応を講じ、その内容を市に報告しなければならない。
4 市立学校は、子ども自身がいじめについて主体的に考え行動できるよう、子どもとともにそれぞれの学年に応じた学級の環境づくりに取り組まなければならない。
5 市立学校は、子どもがより良い人間関係を構築できるよう必要な取組を行わなければならない。
(保護者の責務)
第6条 保護者は、子どもの心情の理解に努め、子どもが心身ともに安心し、安定して過ごせるよう子どもを愛情をもって育むものとする。
2 保護者は、いじめが許されない行為であることを子どもに十分理解させるものとする。
3 前2項において、保護者は必要に応じて、市又は学校に相談その他の支援を求めることができる。
4 保護者は、いじめを発見し、又はいじめの疑いを認めた場合には、速やかに市、学校又は関係機関等に相談又は通報をするものとする。
5 保護者は、学校が行ういじめの防止に対する取組に協力するよう努めるものとする。
(子どもの役割)
第7条 子どもは、互いに思いやり共に支え合い、いじめのない明るい学校生活に努めるものとする。
2 子どもは、いじめを受けた場合には、一人で悩まず家族、学校、友だち又は関係機関等に相談することができる。
3 子どもは、いじめを発見した場合(いじめの疑いを認めた場合を含む。)及び友だちからいじめの相談を受けた場合には、家族、学校又は関係機関等に相談することができる。
(市民及び事業者等の役割)
第8条 市民及び事業者等は、それぞれの地域において子どもに対する見守り、声かけ等を行うとともに、地域が連携して子どもが安心して過ごすことができる環境づくりに努めるものとする。
2 市民及び事業者等は、いじめを発見し、又はいじめの疑いを認めた場合には、市、学校又は関係機関等に情報を提供するよう努めるものとする。
(行動計画の策定)
第9条 市は、基本理念にのっとり、子どもが安心して生活し、学ぶことができるいじめのない社会の構築を総合的かつ計画的に推進するため、いじめの防止に関する行動計画(以下「行動計画」という。)を策定するものとする。
2 前項に規定する行動計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) いじめのない学校づくりに向けた子どもの主体的な参画に関すること。
(2) いじめの防止に向けた教育及び人づくりに関すること。
(3) いじめの防止に向けた普及啓発活動に関すること。
(4) 次条に規定するいじめ防止啓発月間に関すること。
(5) いじめを早期に発見するための施策に関すること。
(6) いじめを防止し、及び解決するための施策に関すること。
(7) いじめに関する相談体制等に関すること。
(8) いじめを受けた子ども及びいじめを行った子ども並びにその家庭に対する支援に関すること。
(9) 前各号に掲げるもののほか、いじめのない社会を実現するために必要なこと。
3 市は、第1項の規定により行動計画を策定したときは、これを公表するものとする。
(いじめ防止啓発月間)
第10条 子どもをいじめから守り、社会全体でいじめの防止への取組を推進するために、毎年6月及び10月をいじめ防止啓発月間(以下「啓発月間」という。)とする。
2 市は、啓発月間において、その趣旨にふさわしい広報啓発活動を実施するものとする。
3 市立学校は、啓発月間において、人権及び道徳に係る教育を実施するとともに、子どもが主体的にいじめの防止に向けた活動を展開できるよう支援及び指導を行うものとする。
(相談、通報又は情報の提供)
第11条 何人も、いじめを発見し、又はいじめの疑いを認めた場合には、市に相談、通報又は情報の提供(以下「相談等」という。)をすることができる。
(相談体制等の整備)
第12条 市は、いじめに関する相談等に速やかに対応するとともに、全ての子ども、保護者その他いじめの防止に関わる者が安心して相談等ができるよういじめに関する相談体制を整備するものとする。
2 市は、いじめを未然に防止し、いじめから子どもを守るため、いじめに係る情報の一元化を図り、関係機関等との相互の連携及び迅速かつ適切な対応ができるよう組織体制を強化するものとする。
3 市は、市立学校におけるいじめに係る相談体制の充実のため、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー等の配置に努めるものとする。
(財政的措置等)
第13条 市は、この条例の目的を達成するため、適切な財政的措置を講ずるものとする。
2 市長は、この条例の目的を達成するため、必要に応じて国及び滋賀県に対して適切な措置を講ずるよう要請するものとする。
(大津の子どもをいじめから守る委員会)
第14条 市は、相談等を受けたいじめ(いじめの疑いを認めた場合として相談等をされたものを含む。以下この条において同じ。)について、必要な調査、調整等を行うため、市長の附属機関として、大津の子どもをいじめから守る委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会は、市長の諮問に応じるほか、相談等のあったいじめについて、その事実確認及び解決を図るために必要な調査、審査又は関係者との調整(以下「調査等」という。)を行うものとする。
3 委員会は、必要に応じて市長に対し、再発防止及びいじめ問題の解決を図るための方策の提言等を行うことができる。
4 委員会は、特に必要があると認めるときは、関係者に対して資料の提出、説明その他必要な協力を求めることができる。
5 委員会は、市長の諮問に加えて、教育委員会からの協議に応じることができる。
(委員会の組織等)
第15条 委員会は、委員5人以内をもって組織する。
2 委員会の委員は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱し、又は任命する。
(1) 臨床心理士等子どもの発達及び心理等についての専門的知識を有する者
(2) 学識経験を有する者
(3) 弁護士
3 委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
4 委員は、再任されることができる。
5 前各項に定めるほか、委員会の組織等に関して必要な事項は、規則で定める。
(是正の要請)
第16条 市長は、委員会からの調査等の結果の報告を受け、当該報告を踏まえて必要があると認めるときは、関係者(調査等の結果により、いじめを行ったと認められる子どもを除く。)に対して是正の要請を行うことができる。
2 市長は、是正の要請をしたときは、その後の経過の確認を行い、その結果を委員会に報告するものとする。
3 是正の要請を受けた者は、これを尊重し、必要な措置を執るよう努めるものとする。
4 是正の要請を受けた者は、当該是正の要請に係る対応状況を市長に報告するよう努めるものとする。
5 前2項において、当該是正の要請を受けた者が、国又は滋賀県の所管に属する場合は、この限りでない。
(委員会への協力)
第17条 市立学校、保護者、市民、子ども及び事業者等は、委員会の調査等に協力するものとする。この場合において、子どもへの調査等の協力については、子どもに過度な負担が生じないよう最大限配慮されなければならない。
(活動状況の報告及び公表)
第18条 委員会は、毎年の活動状況を市長に報告するものとする。
2 市長は、前項の規定による報告の内容を、市議会に報告し、及び市民に公表しなければならない。
3 市議会は、前項の規定による報告に加えて、必要があると認めるときは、市長に対して委員会の活動状況について報告を求めることができる。
5 市長は、必要と認めるときは、是正の要請及びその対応状況の内容を公表することができる。
(個人情報に対する取扱い)
第19条 市は、この条例の施行に当たって知り得た個人情報の保護及び取扱いに万全を期するものとし、当該個人情報をいじめの防止に関する業務の遂行以外に用いてはならない。
2 委員会の委員は、正当な理由なく、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
3 いじめに関する相談等に関係した者は、正当な理由なく、その際に知り得た個人情報を他人に漏らしてはならない。
2 委員会は、市立学校を除く学校の設置者又は管理者に対して、第17条に規定する市立学校に係る規定について、協力を求めることができる。
(委任)
第21条 この条例の施行について必要な事項は、規則で定める。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、平成25年4月1日から施行する。