■生活保護は命を守る最後のとりで
 改悪は絶対許せない
2013119日)

 厚生労働相の諮問機関、社会保障審議会の「生活困窮者支援特別部会」は16日、生活保護制度の大改悪を打ち出しました。生活保護利用者が「就労可能」とされ、一定期間で就職できなかった場合、本人の望まない職種・場所での就職を迫ることになる「低額であってもいったん就労」を認定の基本にするよう求めています。

 これでは、低賃金・低待遇の仕事でもなんでも強要することになり、労働環境をいっそう引き下げかねません。

 生活保護利用者の「扶養義務者」にも扶養が困難な理由の説明を求めることも必要だとしています。

 現行では、扶養できる親族のあるなしは生活保護受給の要件ではありません。それでも親族への扶養の問い合わせが、受給申請を抑えこむ大きな原因になっています。それをさらに強めるものです。

 就労や保護費の支出状況を調べることができるよう、地方自治体の権限を強めることも書き込みました。そもそも少なすぎる生活保護費ですが、裁判でも使い道は本人の自由と認められています。

 厚労省は報告書をもとに、生活保護法の改悪案と新法案を通常国会に提出する方針です。

 「生活扶助」の現行基準を検証してきた社会保障審議会の生活保護基準部会も16日、報告書をまとめました。

 検証結果をそのままあてはめると、60歳以上の単身世帯では生活扶助費が月約3300円(45%)増え、60歳以上の夫婦世帯では約1700円(16%)増え、夫婦と子ども2人の世帯では約26300円(142%)減ることになるので、多人数世帯などの保護費を引き下げるというのです。

 厚労省はこの結果を踏まえて、2013年度の生活扶助の基準額の見直しを検討し、1月末に閣議決定する予定の13年度予算案に盛り込みます。

生きる権利こわす安倍政権の「第一歩」

 2つの報告は、生活保護を受けにくくし、受給者の保護費を削減する方向です。貧困に陥った国民の最後のとりで、憲法の「生きる権利」を侵害する大改悪です。これは、総選挙で「生活保護費1割削減」を掲げた自民党・安倍政権の第一歩です。

 いずれも、消費税増税と社会保障の「一体改悪」を推進してきた民主党政権で検討され、自己責任″の押し付け自民党政権の復活で、生活保護制度のいっそうの改悪に踏み込むものです。
 「就労」の必要性をいうなら電機リストラをやめさせ、雇用確保を最優先にすべきです。「くらしの安全網」を保障する生活保護制度の充実こそ求められているのです。

子育て世代を直撃

 国民全体の消費水準が下がり、生活保護レベル以下の所得でありながら保護を受けていない人がぼう大にいるなかで、比較した低所得世帯の生活費の水準が生活保護基準よりも低くなる「逆転現象」が起こることはありえます。

 この結果を基準引き下げに反映させることになれば、子どもが多い世帯の基準がより引き下げられることになります。これでは「貧困の連鎖」を助長する結果を招きます。

 また生活保護制度は、住民税の非課税世帯の基準、就学援助や保育料など各種の福祉的制度の基準となっていることから生活保護利用には至らないでギリギリで頑張っている子育て世帯に大きな影響を及ぼします。

生保基準引き下げを許さない

 北海道旭川市議会は昨年12月、日本共産党市議団が保護基準の引き下げを行わない一点で賛同を求め、意見書を賛成多数で可決しました。

 「生活保護基準の護持を求める意見書」の内容は次のようなものです。

 厚生労働省の第11回社会保障審議会生活保護基準部会が119日に開かれ、生活保護基準の引き下げに向けた検討を本格化させた。

 生活保護基準は、日本国憲法第25条にある「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する極めて重要な基準である。ナショナルミニマムとしての生活保護基準の引き下げは、格差、貧困を一層拡大させ、国民生活に重大な影響を及ぼす。

 最低賃金は生活保護を下回らないようにすることが法律で定められており、基準額の引き下げは、最低賃金の引き上げにブレーキをかけるとともに、引き下げにつながりかねない。基準額は、住民税非課税限度額とも連動しているため、基準額が引き下がれば、これまで非課税だった低所得者にも課税されることになる。

 このことは、保育料、国民健康保険料、介護保険料の基準などにも影響し、負担が増加する人が生まれるとともに、就学援助が打ち切られ、多数の子育て世代に影響する。国民の命を守る生活保護基準の引き下げは、生活保護制度を利用している人々の生活を根底から破壊するばかりでなく、国民生活全般に影響を及ぼすことは必至である。

 よって、政府においては、現在の生活保護基準を護持するよう強く要望する。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

    平成241226日  旭川市議会