■日本共産党が「いじめ・自殺」でシンポジウム(2012・8・26)
「子どもの命が一番」の学校、行政、社会を
日本共産党滋賀県委員会と大津・湖西地区委員会は26日、大津市内の市立中学校で起きた中学2年生の自殺の背景に、深刻ないじめがあった問題をめぐって、「『いじめ』と教育を考えるシンポジウム~『子どもの命が一番』の学校、行政、社会をつくるために」を開きました。約100人の方たちにご参加いただき、活発なご意見をいただきました。ご協力をいただいたコーディネーター、パネラーの方たちをはじめ、みなさまに心からお礼申し上げます。悲しい事件が二度と起こらないために、さまざまな取り組みがされていますが、命を大切にする政治をめざす日本共産党として、これまでに県委員会アピールや大津市議団の見解も発表してまいりました。シンポジウムを第一歩の取り組みとすれば、さらに、みなさまとともに第2歩、第3歩の取り組みを進めてまいります。
コーディネータ 河瀬哲也さん(どの子も伸びる研究会事務局長)
シンポの表題の「命」が気になる。学校は命も守れないのだろうか。「いのち輝く」学校にとよびかけたほうが、とりくむ内容を、よりイメージしやすいのではないか。いじめのない学校、社会をどうつくっていくか。子どもが、子ども自身の力で解決することが、もっとでてきてもいいのではないか。根本的には、人間らしく生きていく力をつける授業がだいじではないか。先生たちにそうさせない反動的教育政策という問題がある。
パネラー 宮本たけしさん(衆院議員・文部科学委員) 大津の事件は、これまでの自殺の教訓が生かされていなかった。けっして弁明できるものではない。みなさんと何をすべきか考えたい。子どもが自殺した学校は、文部科学省の道徳教育研究指定校だった。「規範意識」では解決できない。ほんらい楽しい場所の学校がストレスと抑圧感を感じ、社会の病理の防波堤になれないでいる。そこにメスを入れなければならない。克服する確かな力は子どもたちの中にある。子どもたちこそ、どうしなければならないかを知っている。子どもの発言権を保障し、子どもたちとともに歩みたい。
パネラー 福井雅英さん(北海道教育大学教職大学院教授)
市や学校の対応に違和感、もどかしさを感じた。家庭に問題があるといって、学校に責任がないと主張しているように聞こえた。学校は、問題を抱えている子にもっと寄り添うべきだ。教師のだれも気づいていなかったとは思えない。気づいても、それが共有されなかったのではないか。中学2年、3年の自殺は、いじめ自殺の6割を占める。そこに思春期に、自分の尊厳を傷つけられるいじめの深刻さがある。教師は問題を感じるセンサーを磨かなければならない。しかしそのための時間がない、学校が問題を共有できるか。話しにくい雰囲気が醸成されていたのではないか。センサーを磨くためには、子どもと関わり、それを教師と話し合う子ども研究が必要だ。教師の社会認識も求められる。課題は大きい。
パネラー 岡見 要さん(元大津市内中学教員)
勤務していた中学は荒れていて、教師は疲れ切っていた。保護者と徹底対話路線でいこうと決意して、たくさんの親御さんの協力が得られた。問題があった時が対話のチャンス。最後の3年間は、不登校や教室に行けない子とじっくり話し合えた。家庭内暴力など、立ち入った話も何でも話してくれた。私には幸せな時間だったが、多くの教師はそんな時間はない。子どもをどう見るか、学年できちんと話ができるよう、忙しくてもやりたい。外部機関と言うと、すぐ警察というが、市教委や相談センター、少年センターなど、協力が得られるところも多い。
参加された方たちから寄せられたご意見・ご感想
○問題の背景や核心に触れる内容になっていてよかったです。こういう場がもっとこれからも必要です。質問したかったのですが、時間切れで…(1)「いじめ防止条例」の制定とは、どんな内容で、どんな効果があるのか、(2)現実的にいじめにあっている当事者やその親がどこに相談に行ったらいいのか
○とってもよかった。子どもを丸ごとつかむための学級通信や家庭訪問などが上から制限されている現状。手をつながなければと思います。
○『いじめ』の問題をきっかけにして、いろいろなほかの問題についても考える機会を得ることができました。私は私の立場で、子どもたちの生きる力、子どもたちに自信を持ってもらえるよう生活していきたいと思います。子どもたちに禍根を残さないよう、社会を、政治を変えないとだめですね。頑張りましょう。
○子どもからは『いじめがあったのに先生は隠しているとみんな言っている』と聞いていました。が、結果的にしっかり解明されずにいたのだと改めて、なんとかできなかったのかと自らを振り返っています。しかしマスコミの対応は、子どもたちはもちろん、おとなも不安定になっていき、何とかならないのかと思います。本当の意味で「子どもたちが主人公」になる社会実現のため、頑張らねばと思います。現場の先生たちを支えることも必要だと思います。
○過度な受験競争をなくすためには、義務教育年限を延長し、すべての子どもたちが18歳までは無償で学校教育を受けられるようにすることが大切であると考えます。とくに発達が緩やかな知的障害の子どもたちが養護学校高等部卒業した後の学ぶ場である専攻科を県内に設置してほしいと思います。
○公立校と私立校におけるいじめの実態の比較をしてほしい。地域との関連で、いじめの現れ方に違いがあるような気がする。シンポジウムを設定してもらったが、高齢の方が多いように思う。ここで学んだことをどのように役立てていけばいいのだろうか。地域の小中学校の授業参観は祖父母の代の方の参加はない。PTA活動の中へ、祖父母の世代も参加させるような地域の工夫も必要に感じる。
○子どもたちも、保護者も、地域の方々も、学校の先生方も、教育委員会の方々も、誰もが子どもの生命を守り、輝かせたいと考え、努力している。課題やあやまちもあるが、ただ一方的に批判するだけでは解決にならない。それぞれの立場の者が、子どもたちの未来のために、精いっぱい努力し続けることを信じたい。新たな提言が出されることを期待します。
○久しぶりに河瀬先生、福井先生のお話をお聞きすることができてとてもうれしかったです。滋賀民報の福井先生の今回の大津市のいじめ問題についての見解を拝読しました。何とか時間をやりくりして本日のシンポジウムに参加させていただきました。幸い今いじめに直面している子どもが通う学校の教師の方が参加されていて、発言もされましたので、後日その方とお話しさせていただこうと思っています。子どもから発せられるSOSを感じ取れる教師のセンサー、今一番求められていると思います。
○まさにいま必要なのは「子どもが主人公」になれる教育が必要だと思います。現場の先生がたえず子どもに寄り添って、現在の子どものその悩みをつかみ、いじめられている子どもを見たら、現場の教師が子供の悩みに寄り添って、先生と生徒が一緒になって問題を解決していく教育が、今一番必要であると考えます。
○本物の授業で、本当の学力を身につけさせること! 子どもたちが競争の中に身を置き、自己肯定ができない状況を、社会全体が作り出しているようだ。受験が目的の教育体制から脱し、学びあう子ども同士がつながり結ばれていくこと。子ども同士が多くの場面でグループをつくり、自由に討論し、教師の助言を受けながら、各々自分の考えを確立し、自己評価をしていく、文部省の教育課程など必要のない制度ができないものか。教師はもっと子どもと遊びなさい!
○宮本さんの、子どもたちとともに歩もうの確信が語られたことが非常な成果だった。よかった。深い内容だった。さすがに共産党だ。拍手したい。
○「共有できない条件」を改善するうえで、教員が民主的教師論にしっかり立つ必要がある。その立場に立ってこそ、状況を変えるたたかいを組織することができる。
○この事件が起きて、「自分はどうしたらいいのだろう」「何が自分にできるのだろう」と自分の中で自問していたところ、このシンポがあり、参加しました。いろいろな角度から今回のいじめ問題を深く掘り下げた討議となり、自分の中にも整理できたように思います。(保育の場で)私たちが大切に実践している、自己肯定感を育てること、自我の芽生えを大切に育てること、自分の思いをはっきり言うことは、今日の会議の発言の内容と重なるところがあり、保(幼)小中高とつなげていくことの大切さを学ばせてもらいました。もう少し参加が多いとよかったですね。でも、さすが共産党というにふさわしいシンポジウムでした。