■高校全県1学区 教育に混乱を持ちこむ知事の強行提案(2004年12月1日)
滋賀県の国松善次知事は1日、県議会の提案説明で、県立高校普通科の全県1学区制を06年4月の新入生から実施するとし、「戦後最大の教育改革が実り多いものとなるようしっかりとりくむ」と強調しました。
全県1学区は、現在の全県6学区を廃止するもので、受験競争激化と地元の高校に進学できなくなる子どもの多発、地域住民と高校の関係をたち切り、高校廃止も招くと強い批判が出ています。教師や父母の不安と批判に加え、町議会も批判の意見書を提出しています。
知事は、現教育長が諮問した県立高校通学区域制度検討委員会が、県民世論調査もして、今年6月に「全県一学区が望ましい」と答申したと、県民の支持を得たもののようにのべました。
しかし県教委の県民意識調査結果は、そのまま読めば「現状維持」が多数。それを「学区拡大」「交流枠拡大」などを合計して「学区拡大方向が5割を占めた」とし、その中でも1/3以下だった「全県一学区」だけを「矛盾がない」として、他の意見は切り捨てたものです。このような解釈が許されるのなら、どんなことでも言えるでしょう。
知事は「生徒が幅広い学校から選べる」と提案理由にあげましたが、検討委員会では、その選択の前提となる「特色ある普通科とはどのようなものか」との県民の問いに答えられませんでした。しかも全県1区実施には問題が多すぎるとして、実施時期を示せなかったのです。
県教委は、全県1学区のための県立高入学者選抜方法等改善協議会を9月に設置しましたが、非公開のうえ、まだ2回しか協議していません。当初は来年1年間かけて、協議する予定でしたが、年度内に「中間報告」をまとめ、来年6月には入試概要を、9月には要項発表というハード・スケジュールです。どこに関係者や県民の意見を反映する余地があるのでしょう。
知事の06年実施表明は、受験期の子どもたちに混乱を強いる見切り発車というしかありません。
もともと学区を廃止するかどうかは、前県教育長が諮問した県立高等学校将来構想懇話会が正反対の報告をまとめています。この報告では学区の設置は、「ゆきすぎた受験準備や極端な学校間の学力差を緩和縮小し、中学校・高等学校教育の正常化、地域に根ざした高校の育成、遠距離通学やすれ違い通学をできるだけ解消し、ゆとりある充実した高校生活を過ごす」という積極的なねらいがあったと指摘。他の県民生活の地域区分とも整合していると評価したうえで、通学区の拡大や廃止は、メリットとデメリット、地域による現れ方の違い、県民の中にもさまざまな意見があることに「十分留意した慎重な対応が望まれます」としていました。
学区の廃止は国の教育政策に沿うものであっても、その弊害に目をつむり、事前の議論も尽くさないで、「戦後最大の教育改革」を強行しようというのは許されません。