■「びわこ空港 受益額は費用の3割」滋賀自治研が批判(2001年5月15日)

 滋賀県が計画している「びわこ空港」について、滋賀自治体問題研究所は15日、推進論の根拠とされている「経済アセスメント」を徹底批判した「とばない翼 びわこ空港」を発表しました。

 研究は、日本の空港政策の分析から、そもそも「日本の空港政策の中にびわこ空港は存在していない」と論証。空港利用者数予測では、2つの異なった手法で独自の予測を算出し、空港による受益は建設コストの3割にしか過ぎないこと、「ムダな公共事業」という県民世論を裏づけました。

 県が、過大な見込みの「経済アセス」の数値を独り歩きさせ、「便益が大きい」としてきた宣伝を根底から揺り動かすものです。

 このなかで「びわこ空港」は、第6次空港整備計画(1991年11月採択)に「今後検討を要する」という意味で「予定事業」と記載されたにすぎず、現在の7空整では、「予定事業」という言葉も、「びわこ空港」も消えていると指摘。国は「地方空港は必要ないという明確な方針」を打ち出しており、「びわこ空港」も「現在の予測を越えた地元負担」がありうるとしました。

 また、これまでの「外圧」と陳情合戦による地方空港乱造で、空港政策が「迷走」している現状を示し、「地域振興幻想」にまどわされず、「空港いらない県」を宣言することが、日本の空港政策の乱れを正すことになると結論しています。

 この立場から、県の「経済アセス」は「地域振興幻想」を高めたと批判。同アセスが、2010年の開港時に86万人が利用、4路線、将来的に5路線が成立し、費用・便益比が2・17としていることを過大すぎる見込みだと、具体的に反論しています。

 利用数予測では、県が採用した「犠牲量モデル」の前提を現実的に補正し再計算、また利用圏域を別の方法で検討した結果、県の数値とほぼ一致し、試算した近藤学滋賀大学教授は「2つの方法で、同じ結果が導かれたことは、信頼できる結果と自負できるものです」と説明。

 費用・便益の比率では、県の想定に空港建設による機会費用、送電線移設費、公債費負担、時間価値などを加えると、0・324と算出され、費用が受益を大幅に上回りました。これまで県の「経済アセス」が2・17と、樹液が大幅に上回るとしてきたのとは正反対。「びわこ空港建設は何ら経済的合理性を持たない、社会的公共性の極めて低い事業」と結論しました。

 地域経済への波及効果でも、総事業費の1・45倍程度(「経済アセス」は1・56倍)、建設部門を除くと0・66倍とし、「びわこ空港の建設が滋賀県経済にほとんど影響を与えない」と結論しています。