■水需要の見直しは避けられない(1996年7月13日)
四半世紀にわたる琵琶湖総合開発が来年3月で期限切れで終了を迎えます。滋賀県は総合評価(中間取りまとめ)をまとめ、琵琶湖保全の国レベルの対策が必要だとしています。しかし、毎秒40㌧の新規利水で起きる大幅な水位変動が琵琶湖に与える打撃の評価に弱点を持ち、保全の訴えは説得力を欠いています。
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「中間取りまとめ」は、「水資源開発事業と地域開発事業で県民の生活環境が改善され、県内総生産が著しく伸びた。琵琶湖・淀川流域一帯としての水質保全や節水への取り組みなどで、近畿圏の健全な発展に寄与できた」と開発の効果を強調しています。
94年の渇水についても、「琵琶総の完成によって回避された被害額」を産業連関分析で推計、大阪府で1736億円から2814億円、兵庫県で382億円から502億円の損害が回避できたなどとしています。
しかしいっぽうで、「琵琶湖の水質は回復していず、集水域の森林や農地などが減少。最近の気象変化により大幅な水位変動が目立ち、琵琶湖の生態系への影響が懸念される」とのべ、「国などの理解と支援を得て、琵琶湖の総合的保全を強力に推進していく必要がある」としています。
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琵琶湖総合開発は、近畿の経済成長に必要な水資源の確保を目的に開始されました。琵琶湖をダムのように水位を3mも水位を変動させ、毎秒40㌧の新規利水を確保しようというものです。
水位変動に耐える湖岸堤や港のしゅんせつなど事業がほぼ完成し、92年からは毎秒27㌧の暫定水利権が設定され、琵琶湖の放流口、南郷洗堰(あらいぜき)の操作規定も動きだしました。
その直後におきたのが94年の観測史上最低の渇水と、翌年の水位の異常な上昇。琵琶湖の生態系の変化を集中的にしめす有害アオコの発生や漁獲の激減など、琵琶湖への大打撃となっていることは「中間取りまとめ」にも明らかです。
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「近畿圏の過大な水需要計画にもとづく琵琶湖の大幅な水位変動は、琵琶湖を死の湖にする」。琵琶湖総合開発の当初から、日本共産党や近弁連、住民団体などが警告を発してきました。
「中間取りまとめ」は、下流の上水道取水量は横ばい、循環利用の進む工業用水では、取水量は低下の一途をたどっていることを示し、「毎秒約27㌧の新規水供給が開始されたことから、目標は達成された」とのべ、日本共産党や科学者が指摘し続けてきた「過大な水需要予測」という指摘が当たっていたことを示しています。
しかし、水需要見直しではなく、「『淀川水系における水資源開発基本計画』においては、必要水量の増加が見込まれている」とのべ、水需要見直しの根本問題での検討は回避しています。
日本共産党滋賀県委員会は琵琶湖渇水での緊急対策提案でも、洗堰操作規定の見直しを主張。洗堰の放流が渇水を加速した可能性のあることを指摘してきました。
学者からも、従来の気象条件を前提にした琵琶湖の水位操作には疑問が提出されています。
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県は「琵琶総は開発が中心だった。これからは保全事業だ」として、琵琶総の全事業費に匹敵する総額1兆八8100億円の「ポスト琵琶総」の27事業をあげています。県はこれを「琵琶湖保全の特別立法」でと検討していました。しかし、国は「琵琶総の目的は達成されたという認識だ」(国土庁)とのべ、県も特別立法要求を引き下げてしまいました。
「中間取りまとめ」は、琵琶湖の水質について、「今の法律、条例で施策を進めるなら、今後の改善は絶望的状況に近い」(松井三郎京大教授)などの声をヒアリング結果としてまとめています。
琵琶湖の保全のしくみを求める声を生かすには、水需要を見直し、琵琶湖の水位を過度に変動させない水位操作に変えることが避けられない課題です。