■影響は「軽微」評価くつがえす大不漁 琵琶湖渇水(1996年7月4日)

 滋賀県議会で4日、日本共産党の吉原稔県議は、一昨年の琵琶湖渇水の影響を調べた琵琶湖・淀川水質保全機構の「総合調査報告書」が「低水位は漁獲量と無関係」としていることを批判し、「今年のアユ、ホンモロコ、エビの大不漁は、報告の科学的権威を打ち砕いた」と指摘し、県の再検討や琵琶湖水位調整への意見表明権の回復を求めました。

 琵琶湖・淀川水質保全機構は建設省と関係府県などでつくられ、一昨年の観測史上最低の渇水の影響を調査。報告書は、全体として「渇水が琵琶湖の水質や生物に与えた影響は軽微」とし、県もこの見解に追従してきました。

 しかし今年、琵琶湖漁業は極端な不漁で、アユは平年の2/3、ホンモロコは前年の73%、エビは54%に激減。県漁連は「産卵期だけは水位変動を止めて」と知事に「直訴」までしてきました。

 報告書が「年最低水位」と「総漁獲量」に関係が見られないとしたことで、吉原県議は「産卵期も成長期も違う魚種をいっしょにした総漁獲量と、産卵期などを区別しない年最低水位の検討では関係はつかめない」と指摘。「渇水はたいしたことがない」という誤解は、琵琶湖保全策推進に有害だと指摘しました。

 県は「報告書の内容にはコメントできない」「不漁の原因はわからない」とし、稲葉知事は「低水位にはマイナス1・5mを待たず意見をのべてきた。水位操作は生態系にも配慮されている」と答弁。「ポスト琵琶総」で水位調整への発言権回復を求める考えはないとしました。

 琵琶湖渇水の影響を「局所的、一時的」「軽微」なものとした報告書は、渇水時に、北湖で透明度が上昇、南湖東岸域で水質が悪化するなど、水質への影響は、水域・河川により異なったが、水位・流量が回復して例年並の水質となったとし、また生物への影響も「全体として影響は軽微」としました。

 渇水時に北湖の透明度が14mまで改善した原因については、「河川から栄養塩の流入が減少して、植物プランクトンの増殖が抑えられた」ためとのべ、北湖で初めてのアオコ発生については「猛暑による水温上昇、日照の増大、渇水による湖水の滞留などが原因と推定」しています。

 調査は、建設省と関係府県、水資源開発公団などが設置した「琵琶湖・淀川水環境総合調査委員会」(委員長・芦田和男京大名誉教授)によるもの。琵琶湖面積の1%、約6km2が干陸化した一昨年の観測史上最悪の渇水について、水理・水質、生物の2小委員会が各2回の検討会と現地調査をしてまとめました。最終報告書なのに、「今後とも継続して総合的に調査」するとしています。

 岡本巌滋賀大元教授は「水質や生物の変化はわずかでも重大。水位を大変動させる琵琶湖総合開発はアセスメントもなく始まった。だからこそ、しっかりとした調査が必要だった。琵琶湖に関心を寄せる人たちには、ほんとうに軽微だったのかと疑いを残した。不十分、不誠実な発表です」と話しています。