■琵琶湖の高水位被害補償を(1995年5月19日)

 琵琶湖の水位上昇で田畑や家屋が冠水、浸水した問題で19日、日本共産党滋賀県委員会と県議団は、稲葉知事に実態の徹底調査や内水排除施設(排水ポンプ)の増設、被害補償を国・公団とともに誠意を持って対応するよう要求しました。川内たかし参院滋賀選挙区候補、吉原稔県議、森茂樹県議が土木部次長に申し入れ書を提出しました。

 申し入れは「湖岸堤管理用道路建設に際して浸水被害が懸念されたが、県や水資源開発公団は内水排除施設をつくって対応すると説明してきた。しかし今日の事態はその対応が不十分であった」ことを示したとして、被害再発防止対策、琵琶湖総合開発がほぼ完成したとして定めた水位操作の見直しを求めています。

 川内氏らは、「琵琶湖総合開発は目的に洪水の解消をうたったが、現実はそうなっていない。科学的な見直しが必要」「彦根市稲枝などでは排水施設のない広い地域で冠水が続いている」とのべ、県が「計画上、小さい面積の冠水はやむをえない」「流域全体を見ての水位操作だからやむをえない」と答えたことに反論。「数年前の冠水被害で対策を取った新旭では、今回被害が出ていない」とも指摘して、誠実に検討するよう重ねて要求しました。

 このほか、琵琶湖の常時満水位を30cmとする瀬田川洗堰(あらいぜき)操作規則を見直すこと、また操作規則が策定され県が警戒・危険水位基準を撤廃したことが対応の遅れを招いたことは明白だと指摘して、水位管理で県の自主性を確立すること、高水位の水質への影響も調査することも求めました。


■まだ家屋は浸水、麦やメロンは全滅

 日本共産党の寺前いわお衆院議員と滋賀県地方議員団は21日、琵琶湖の増水でビニールハウスや田畑が冠水、家屋浸水の被害のおきた湖南・湖東地域を視察しました。視察を待ちかまえていた農家は、メロンのハウスや麦畑を前に、「全滅、皆無作だ」と対策を強く訴えました。

 琵琶湖は、今月中旬の雨で16日にプラス93cmの高水位となり、全県で878haの農地が冠水。湖から流れ出る唯一の川、瀬田川の洗堰(あらいぜき)の全開で、この日、64cmまで下がったものの、いぜん安土町では家屋3戸が浸水したままです。

 ビニールハウスが浸水した草津市北山田では、湖南中央園芸組合の横江清数組合長らが、小さくふくらみ始めたばかりのメロンの実を手に、「徹夜で排水ポンプを動かしたが手遅れ。次期作もむり。メロンや軟弱野菜をふくめ約百棟のハウス、組合員100人全員が被害を受けた。これでは若い者が意欲を失う。内水排除の施設を設置してほしい」と訴えました。

 この地域は、琵琶湖総合開発(琵琶総)の湖岸堤建設時に、水資源開発公団に湖岸堤の内側で河川からあふれる水を汲み出ための施設を強く求めましたが設置されず、湖との間を遮断するひ門は、河川の増水で何の役も立ちませんでした。

 近江八幡市北の庄では、広大な麦畑が冠水、実り始めたばかりの穂のまま枯れ始めています。ここも排水施設は設置されず、農家は「農業共済が出るかどうか。麦は刈り取らなければ燃やすにも燃えない。水位がプラス30cmを越えたときに洗堰を開けていたら被害はなかった」と訴えました。


■住民の立場で水位調節を

 琵琶湖の増水で田畑や家屋の浸水被害が出ている問題で22日、日本共産党の寺前いわお衆院議員と川内たかし参院選滋賀挙区候補、森茂樹県議が、滋賀県大津市の瀬田川洗堰(あらいぜき)で琵琶湖の水位調節にあたっている近畿地方建設局琵琶湖工事事務所を訪れ、増水時の対応を住民の立場にたっておこなうよう申し入れました。

 福田正晴所長は、「水文評価は途中だが、5月にしては相当大きな降雨だった。下流の流量限度もあり、洗堰を全開にできなかった。常時満水位のプラス30cmに近づけるため最善の努力をした」と説明。「雨量の予測はできない。被害はお気の毒だが、一定の面積の冠水はやむをえない」とのべました。

 寺前議員らは、「長雨は以前から続いていたし、水害を受けるような雨量ではなかった。洗堰を早く全開すれば被害はなかったという人も多い。水位急上昇への対応は遅すぎた。住民の立場に立って、10門ある水門の半分を全開するなど、こまやかな水位調節はできたはず」と主張しました。

 福田所長は、雨量が特別に多いものではなかったこと、洗堰操作規定が琵琶湖の制限水位を6月15日までプラス30cm、以後8月31日まではマイナス20cmなどとしていることで、「不安定な気候変動からみて、日時で水位を定めているのは不合理といわれるのはそのとおり」と認めました。

 琵琶湖の水位は、今月11日がプラス21cm、それ以後15日には87cmと急上昇し冠水被害が広がりました。琵琶湖総合開発がほぼ完成したとして92年4月から実施されている洗堰操作規定について、日本共産党は見直しを主張しています。