■琵琶湖の異常水位低下でも実証、日本共産党の役割(1995年2月7日)

 近畿1400万人の「命の水ガメ」琵琶湖は昨年夏、120年の観測史上最悪のマイナス123㌢という異常水位低下に見舞われました。6月から8月まで湖周辺の雨量はわずか208㍉。「200年に一度の少雨」「天災ではしかたがない」といわれるなかで、日本共産党は政治の問題だと指摘し、近畿住民の根本的利益を守って奮闘しました。
 
◎「足を運んでくれたのは日本共産党だけ」
 
 まっさきに琵琶湖にかけつけたのは寺前巌衆院議員、藤木洋子元衆院議員、橋本敦参院議員、吉原稔滋賀県議など日本共産党調査団でした。湖北町の朝日漁協では大村忠組合長が「わたしらのところまで足を運んでくれたのは共産党だけだ」と話します。

 調査団は、建設省が滋賀県議会にも提出していなかった資料も明らかにしました。

 琵琶湖から流れ出る水路は、瀬田川洗堰(あらいぜき)から淀川、関西電力宇治発電所、琵琶湖疏水(そすい)から京都の三経路だけ。すべて人間が管理しています。しかし、琵琶湖の放流量と他の河川との関係を示す「淀川、木津川、桂川の三川合流点での流量データー」は実質、秘密でした。

 明らかになったのは、異常少雨の琵琶湖から、ぼう大な放流が続いていた事実です。

◎琵琶湖総合開発が水位低下の原因

 淀川を流れる水のうち、琵琶湖からの水が占める割合は、8月から9月の急速な水位低下の時期に、最大85%にも達していました。

 史上最悪水位となった9月15日も毎秒64㌧(淀川水量の63%)が琵琶湖の水でした。この日を境に27㌧、7%まで削減されたこととは対照的です。10月に入って比率が60%を越えるのはわずか1日だけです。

 雨が降って、琵琶湖以外の河川に水がもどったというだけではありません。

 琵琶湖が湖底をさらしていたとき、琵琶湖水位を管理する建設省近畿地方建設局は「マイナス1・5㍍まで放流は可能、場合によっては2㍍もありうる」とのべました。

 琵琶湖総合開発(琵琶総)の水資源開発工事の完成で、新たに下流府県に毎秒40㌧の水利権が設定され(当面は暫定水量)、水位低下は「当然」とされていたのです。

◎「琵琶湖ではなにがおきてもふしぎではない」

 琵琶湖の水位を低下させても「当然」といえるような科学的な調査は存在しません。

 プラス1・4㍍からマイナス1・5㍍までダムのように水位を変動させる琵琶湖総合開発。しかし、事業実施の前に環境影響調査はおこなわれず、国は水位変動の直接的被害補償の調査しかしませんでした。

 これまでも水位低下の翌年は琵琶湖に赤潮が多発しています。昨年の水位低下は、夏におきた点でも異例の事態。水質浄化の機能をもつ湖岸の水草は壊滅状態です。

 枯れた水草の処理ですら合意はなく、ブルドーザーでかき集めていた滋賀県は、研究者の批判をあびました。

 さらに昨年、比較的きれいだとされていた北湖でもアオコが群発し、湖を緑色に染めました。このアオコに人体有害物質が含まれていたことは、今年滋賀県がはじめて明らかにしたことです。

 アオコ毒性の危険を以前から指摘し、生態系の破壊を警告してきた鈴木紀雄・滋賀大教授は「琵琶湖ではいま何が起きてもふしぎではない。今こそ徹底した調査が必要」といいます。

◎近畿で「琵琶湖を守れ」と主張できたのは日本共産党だけ

 水位が最悪記録を突破するのは「時間の問題」と見られたとき、日本共産党は近畿全域で「琵琶湖を守ってこそ、きれいな水の安定供給が可能」と主張し、行動しました。

 大阪市議団、京都市議団は緊急政策を示し、毎秒40㌧、水位マイナス1・5㍍は当然の権利とする当局の考えを「ただちに一掃すべき」と批判、節水よびかけの強化をもとめました。滋賀県議団は「異常少雨でも、流量調整を適切に実施すれば、史上最悪の渇水は回避できた」と指摘し、放流規則の抜本的見直しを求めました。

 日本共産党は、すでに72年に「琵琶湖の水位を大幅に低下させることは湖水の汚染をいっそう激化して、上水道の水源として使用不能に陥れる危険がある」(「近畿1400万人住民の水を守る琵琶湖政策」)と問題を鮮明にしていました。

 日本共産党以外の政党は、琵琶湖総合開発を推進し、一時期、見直しを主張した社会党も自民党政治に取り込まれ、事業完成を祝うまでに転落しました。

 「上下流は利害が対立」という「常識」から、滋賀県は「下流の水利権設定で、放流削減を求めるのはむつかしい」とし、さらに対策本部設置も大幅に立ち遅れたのです。

 近畿全体の視点で、琵琶湖の保全と水資源の合理的利用という日本共産党の主張が真の「常識」であることは、その後の経過が物語ります。

 日本共産党の指摘に、マスコミも「過大な放流も問題」と論調が変化しました。滋賀県守山市議会では高田昭信市長(当時)が「長年、琵琶湖問題に取り組んでこられたうえでの貴重な提言」とのべ、滋賀県も「水位操作にあたって、上下流の立場をこえて賢明な管理を強く要請する」と主張するようになりました。

 この世論の変化のなかで、近畿地建は、琵琶湖最大のピンチのときに放流量削減に踏みきったのです。

◎水位操作の見直しへ

 先月14日、大津市で開かれた水資源・環境学会。伏見碩二・県琵琶湖研究所研究員は「降水量が不安定な異常気象の時代に入ったいま、琵琶湖保全のうえからも水位を下げない新しい水管理の手法、下流流量と琵琶湖水位の矛盾を大きくしない手法の確立が求められる」とのべました。

 これは、科学技術庁から委託された琵琶湖研究所の「琵琶湖を場とする湖沼環境観測および水質改善技術の高度化に関する研究」の結論です。

 日本共産党は、琵琶総の危険な側面を指摘しつつ、科学的総合調査にもとづく「取水計画」と、「琵琶湖管理委員会」で住民、学者の意見を聞き民主的に水位調整することも提案してきました。

 自民党や社会党のなかには、日本共産党の主張を「異常気象を無視」「琵琶総のおかげで下流の水不足がなかった」と攻撃する議論もあります。これは琵琶湖の直面する危機や水位管理見直しを避ける居直りの議論です。
 
◎過大な水需要計画が住民負担に

 琵琶総は総額1兆8千億円もの巨大水資源開発。野放図な高度経済成長を前提にした水需要予測は、「過大」だとする批判が近畿弁護士会連合会からもだされていました。

 その後、企業は高い工業用水道から水の循環利用にきりかえてきました。琵琶総事業の途中で水利権を自治体に売り払う企業もあり、農業用水も減少の一途。水需要は予測通りにはのびませんでした。

 近畿の自治体労働者や水問題研究者などでつくる近畿水問題合同研究会の村上廣造事務局長は、こう指摘します。

 「過大な水資源開発は、自治体負担を増大させた。節水のよびかけは水道会計を赤字にし、もっと水を使ってくれといわざるをえない。関西は全国でも1人当り水使用量がかなり多い。そして昨年は大阪府下の自治体で上水道料金がいっせいに値上げ。減少した農業・工業用水の上水道転換をすれば、琵琶総は不要だったとさえいえる」

 滋賀の自治体でも上水道は、地下水などの水源を琵琶湖取水にした結果、下流自治体の2倍も高い料金。さらに値上げの動きがあります。
 
◎琵琶湖環境保全法を提起
 
 琵琶湖の生態系を守り、水質を改善するために日本共産党は、74年から琵琶湖環境保全法を提言し、国の責任を明らかにしてきました。

 これは、政党としては日本共産党だけの主張でした。しかし、その主張は現実に力を発揮しています。

 琵琶総を推進し、湖周辺の大開発を推進している稲葉稔滋賀県知事ですら、「琵琶総は開発が主体だった。ポスト琵琶総には、琵琶湖保全の新法が必要」とのべざるをえなくなっています。

 毎議会必ず、琵琶総のゼネコン奉仕をつき、リゾート開発、琵琶湖を取り巻く8つの巨大ダム建設問題などで論戦してきた日本共産党滋賀県議団の吉原稔団長はいいます。

 「日本共産党は、琵琶湖を国民の宝として保全すること、ラムサール条約がいう『自然の賢明な利用』を先駆的に主張してきました。日本共産党は、『何でも反対』の党でも、住民の利益を忘れる党でもない。住民、科学者の声に耳をかたむけ、合理的な社会発展をめざす党だからこそ力を発揮できるのです」

 昨年、県内はもちろん近畿全域からのべ1万人を越える人びとが「琵琶湖を守るために何かできないか」と湖岸清掃にかけつけました。この世論と科学の水準にふさわしく、政治の遅れをただす日本共産党の躍進が切実に求められています。