■琵琶湖渇水 枯れた水草「どうする?」アセスメントなしの水位低下で(1994年9月24日)

 琵琶湖の異常水位低下で干上がった湖底では、水草の枯死が目立っています。この枯れた水草の処理の是非をめぐって、「論争」がもちあがっています。

 干上がって枯れた水草は、水位が回復すれば腐り、水質汚染の原因になるので、今のうちに回収すべきという考えと、もうひとつは、枯れたようにみえても地下茎が残っており、回収は来年の再生に打撃を与えるというのです。

 ともに、琵琶湖を守るための方法をさぐる主張で、「琵琶湖水草清掃大作戦」への参加をよびかけている市民団体のびわ湖自然環境ネットワークや県自然観察指導者連絡会なども、「事前に生きている水草かどうか確認するよう徹底し、枯れたものだけ回収します。水草の観察会も実施します」としています。

 この「論争」で、「枯れた水草をブルドーザーで取り除くのは論外」という指摘におどろいているのは滋賀県。現在、守山市の赤野井湾でパワーショベルやブルドーザーで湖底にこびりついたアオミドロなどをこそげ落とす作業の真っ最中です。在来の水草が生えている地域は除外して作業してきましたが、「はじめて聞いた意見で、よく検討したい」(県環境室)としています。

 水生植物の研究をすすめている琵琶湖研究所の浜端悦治さんは、「一週間程度干上がって枯れ、マット状になった水草のクロモも、そっとめくると地下茎が生きている。カワニナなどの水生動物も乾燥を逃れてマットの下にいます。とらないほうがいい」といいます。

 浜端さんも、「コカナダモが7月に大量の流れ藻になるとき回収するのは有効だし、琵琶湖の水質に改善に必要なこと。むしろ大量に繁茂する場所では施設を設けて、効率的に刈り取るべきです」といいます。

 浜端さんの計算では、700㌶のコカナダモの群落には、チッソが約210㌧、リンは14㌧含まれます。チッソ、リンとも琵琶湖の富栄養化をすすめる物質で、水草を放置すれば、ふたたび湖水に溶け出すほか、水草も翌年芽を出し、繁茂の場所をひろげ、漁船などのスクリューに巻きつく事故の原因になります。

 河川から琵琶湖へ流入するチッソ、リンは、それぞれ年間5400㌧、700㌧と推定され、水草の浄化作用に過大な期待はできません。しかし、水草帯は、魚が産卵し、多様な生物が育つ、生きた琵琶湖の重要な構成部分です。

 問題は、琵琶湖総合開発では10年に1度の確率でマイナス1・5㍍の水位低下が前提になっているのに、水草の枯死にどう対応するかすら、事態に直面してからの手探りになっていることです。藻の刈り取りの仕方でも前例もなく、県は独自の方法を開発するしかありませんでした。

 日本共産党や近畿弁護士会連合会はじめ、市民団体からも、琵琶湖総合開発で生態系に及ぼす影響のアセスメントが強い要求を無視し、工事の強行、強引な琵琶湖からの放流という無謀が強行されたことが原因です。

 浜端さんは、今回の渇水で、「琵琶湖在来のクロモやネジレモは水深1、2㍍の範囲に集中している。ネジレモは、世界中で琵琶湖にしかない植物。これらが大きなダメージを受けた」と指摘します。

 とくにこれまで例のない夏の水位低下で、「9月から11月に水草は開花し、種子をつける。その前の水位低下はダメージが大きい。水鳥も残された地下茎をついばんで、水草の打撃を大きくするかもしれない」といいます。