■滋賀知事選・琵琶湖破壊県政をただそう(1994年6月6日)

 9日告示の滋賀県知事選挙を前に、現職の稲葉陣営は県政を「環境先進県」などと自画自賛しています。琵琶湖を埋め立て、ヨシ群落の破壊など自然環境を破壊してきたゼネコン県政を180度さかさまにした宣伝です。

 現職陣営は、県の広報紙を使って「環境へのこだわりをさらに強く、大きく―一人ひとりの意識が大切」(「ニュー滋賀」)と県民の意識が低いといういっぽうで、湖岸のヨシ群落を保全する県条例や、散乱ごみ防止条例などをあげて、「琵琶湖はみんなの宝もの」と宣伝しています。自民党も「歴史の国から環境先進県へ」「開発から環境重視が県の姿勢」(「自由民主」4月号)などと、県民の高い環境意識をそのまま取りこもうという作戦です。

 琵琶湖は、今年、これまででもっとも早い時期の赤潮が発生したように、水質は悪化の一途をたどっています。その原因は、下水道事業の遅れを放置し、琵琶湖総合開発やそれに続く大規模開発をすすめようとしている県政に責任があることは明白です。

 自民党も「自由民主」で、「琵琶総事業のほとんどは、ダム建設や河川改修などの土木事業」で、「その工事は、ゼネコンを中心に発注されている」「琵琶総の事業である河川改修などでの開発で琵琶湖の湖岸に生えていた植物の『ヨシ』は伐採されるなど、生態系の破壊が進み、水質などの環境は悪化した」といわざるをえません。

 琵琶湖総合開発は、この二十年間に1兆5千億円のゼネコンのもうけ仕事を提供。最終的には1兆8千億円にもふくれあがろうとしています。

 このために、琵琶湖は451ヘクタールも埋め立てられ、水質浄化に重大な役割を果たしてきた湖岸のヨシ群落は半減、観光ごみは増大の一途をたどっています。

 県のヨシ条例や、散乱ごみ条例は、その応急対策ともいうべきもので、さらに大規模工事が予定されているヨシ地帯は保全区域から除外されています。とても「環境先進県」などと胸を張れるようなものではありません。

 水鳥の生息環境を保全するラムサール条約への琵琶湖の登録も、当初、県は「むつかしい」と消極的でした。環境庁が登録の方針を出してから賛成に回ったものの、開発側の建設省とは、「新たな規制をするものではない」という密約までしていました。

 「ゼネコン奉仕の県政を転換してすきとおる琵琶湖をとりもどそう」と訴える「民主県政の会」の候補者、大竹昭郎さんは、「いまの県政では、科学者の貴重な調査や研究が生かされず、環境の破壊を記録するだけの作業になりかねません。ゼネコン県政から、科学の成果を生かす民主県政に転換すれば、琵琶湖は必ずきれいにすることができます」と主張しています。

 同時に、環境破壊の県政は、住民の暮しも破壊する県政であることを指摘。現県政が住民のために使わずためこんだ1千823億円を、住民の反対の声を無視して、巨大ダム開発に3300億円、琵琶湖を埋め立てるびわ湖ホールに250億円などと投入しようとしていること、県民にはこの4月から固定資産税が、近畿で最高の5倍にも引き上げられました。リゾート開発の企業には、不動産取得税や固定資産税を10分の1におおまけする国の方針に忠実にしたがっていると糾弾しています。

 大竹氏は、「科学は人類に奉仕するもの」という信条を高く掲げてきた生態学者です。クリの害虫駆除での天敵利用で成果をあげ、環境にやさしい農業を追求してきました。

 それは、「小さな経営のクリ農家には高価な農薬にたよることは耐えられないからです」と、住民への奉仕の精神に支えられています。

 日本環境学会の林智事務局次長は「21世紀にむけた『環境自治体』を滋賀からつくることを期待します。大竹さんはそれをやれる人です」といいます。