■環境守る施策の前進が必要。琵琶湖のラムサール条約登録(1993年3月18日)

 滋賀県は琵琶湖をラムサール条約(水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)の登録湿地に申請すると決定しました。

 地球規模での環境破壊がすすみ、鳥類、魚類の生息繁殖地である湿地が、干拓や埋め立てで消滅していくなかで、渡り鳥の中継地を保護するラムサール条約は重要です。干潟や湿地の保護には国際的な協力が必要です。

 条約は1971年、イラン北方、カスピ海沿岸の町・ラムサールで、水鳥と湿地の保護に関する国際会議が開かれ、成立しました。加盟国は70カ国。日本は80年に加盟しました。世界では、588カ所の湿地が登録されています。日本では、釧路湿原などわずか4カ所。不熱心な日本政府の姿勢がうかがわれます。

 条約は第三条で、湿地の「賢明な利用(ワイズ・ユーズ)」を定めています。開発を一切禁止するのではなく、農漁業などの利用と保全の両立をめざしています。発展途上国の協力を得るためですが、ここに条約の特徴と限界もあります。

 日本では、干潟や湿地は日びつぶされており、また周辺地域の保全と一体でないと実効がありません。

 琵琶湖周辺では、カモの自然繁殖地の南限とされる山東町の三島池に観光用の巨大なとうろうが立ち、周辺にはゴルフ場などリゾート開発計画がすすんでいます。

 琵琶湖総合開発で建設された湖岸道路は、ヨシ帯を破壊しました。「琵琶湖リゾート・ネックレス」計画の重点地域は、琵琶湖を除く県土の半分に達します。

 湖北野鳥センター付近でも、湖岸道路が通り、水が汚れ、ヨシが破壊されました。県の鳥のカイツブリが1/5に減り、ヒシクイ、コハクチョウなど、希少で「神経過敏な」鳥は減っています。逆に、カワウ、ユリカモメ、カモなど雑食性で「神経の太い」鳥は増える傾向です。カワウの増加は、竹生島の立ち木を枯らし、県はカワウの間引き作戦を実施しています。自然破壊が矛盾を引き起こしているのです。

 稲葉稔知事は「琵琶湖を条約登録しても、当面新たな法的措置は必要ない」とのべました。これではこうした「ワイズでない利用」が野放しになる可能性があります。

 県は昨年、「ヨシ保護条例」を制定しましたが、一方で、西の湖など大きなヨシ帯に河川や道路計画をすすめ、埋め立て計画も持っています。

 日本共産党は唯一、リゾート法に反対した党として、各地で破綻しているリゾート計画の見直しを主張し、滋賀の地方議員団は政府に琵琶湖のラムサール条約登録を要求して交渉してきました。琵琶湖の登録を真に意義あるものとし、琵琶湖と滋賀の自然を守るためにさらに力をつくします。