■環境保全どこ吹く風、草津市烏丸半島「水と光のレイクサイドリゾート」(1992年2月27日)
「琵琶湖リゾートネックレス構想」は、滋賀県面積の43%を対象とする巨大な開発計画です。バブル経済崩壊のなかで、県は計画を見直すのではなく、いっそう促進する方針です。そのひとつ、湖南地域、草津市の烏丸(からすま)半島の「水と光のレイクサイドリゾート」をみてみました。
琵琶湖に突き出した烏丸半島(約36ヘクタール)は、コハクチョウも来る野鳥の天国でした。その半島はいま、ダンプが走り回り、クレーンがうなる工事現場に変貌。県が「ヨシ保全条例」を提案しているさなかに、ヨシは消滅しました。
半島の西側に国連環境計画の国際環境技術センターと県の博物館・水族館が、東側には、草津市の水生植物園などの公園施設が着工されています。これらは住民も期成同盟をつくって期待をよせてきました。
しかし、その間はさまれる中央部分、半島の利用可能面積の6割を占める中心部分は、計画も公表されない「民間開発」のエリアです。
総合建設企業・間組の計画書によると、ここには地上15階地下1階、300室のリゾートホテルを中心に、ショッピングゾーンやリゾートプールなどの計画があげられています。
参加する企業は、昨年募集時は8グループ。そのうち4グループは辞退し、さらに1グループも降り、残ったのは3グループ。開発の主体となる新会社設立は3月だといいますが、その日程も、参加企業もまだ公表されません。
草津市のある職員は「この開発は売り手市場から、買い手市場になった」といいます。自治体の側が企業に注文をつけるのではなく、企業の方が条件をもちだす側に立ったというのです。
この開発を管理する財団法人「びわ湖レイクフロントセンター」では、半島全体の水道、下水道、ガス、電気などの基礎工事をどうするかで頭を痛めています。中心部分が未定では着工できず、遅れれば、他にも影響します。こうしたインフラの工事費は企業が負担するはずですが、計画が決まらなければ、計画確定部分も未定になります。
さらに道路も建設が必要です。下寺下物湖岸道路、下笠湖岸線の拡幅、志那中栗東線。上水道は志那中-下物-烏丸の延長。下水道も専用圧送管が必要です。
「それでも開発推進」というかけ声のなかで、企業への開発規制はどこ吹く風、遠い話になってしまっています。
烏丸半島は琵琶湖国定公園の域外ですが、湖をとおして比叡山、比良山を遠望でき、市街化調整区域の規制がかかっています。その建築物規制「15メートル以下」にたいし、検討中のホテルは50メートルと言われます。
地元の草津市には、高層建築を規制する考えはありません。市内では、33カ所の高層マンションのラッシュがおきているくらいです。
県のリゾートネックレス構想推進本部は、「私たちは開発を頭から抑えることはしない。民間活力の導入でやるところに新しさがあり、魅力あるリゾートの可能性がある」
フロントセンターでは、「富士山も寝ころべばススキのほうが高い。草原からちょっと頭が出る程度のホテルでは魅力も乏しい。市街化調整区域でも、知事が認めれば建設は可能」とまでいいます。