■実効ある「ヨシ保全条例」に、滋賀・科学者会議と自治研が提言(1992年2月25日)

 琵琶湖周辺のヨシ群落の保全をめざす滋賀県が「ヨシ群落保全条例」を県議会に提案しました。さきだつ24日には、日本科学者会議滋賀支部(山本敬治代表幹事)と滋賀自治体問題研究所(岡本巌理事長)が、条例への見解と提言をまとめ、県に提出しました。

 提言は、条例が「湖沼環境保全分野におけるわが国の法令上の空白を埋め、少しでも琵琶湖環境の保全と水質浄化に役立つのであれば、その意義は大きい」としつつ、同時に「内湖の埋め立てや琵琶湖総合開発にともなう湖岸堤や人工島建設などの公共事業によってヨシ破壊を行ってきた行政自身の責任をあいまいにし、またリゾート開発などの新たなる開発行為の容認につながってゆくのであれば、その制定の意義は全く失われる」とのふたつの性格を指摘しています。

 さらに、県の開発優先行政をあらため、残された自然を復活する努力をするべきだとして、ヨシ群落を湖辺の生態系と一体のものとしてとらえ、ヨシ群落の破壊を原則的、全面的に禁止し、規制地域を拡大すること、県行政とは独立した環境保全委員会に基本計画の制定や、立ち入り調査権などの権限を与えることなどを提言しています。

 また、県の条例では、国、水資源開発公団など国関係機関の開発にたいする規制やかけこみ事業などへの規制があいまいになっているとして、国と調整する責任が知事にあることを明記すること、ヨシに重大な影響をあたえる水位変動をもたらす琵琶湖総合開発の見直しや、リゾートネックレス構想の撤回、近畿住民の協力をよびかけることが必要だとしています。

 琵琶湖の独特の景観をつくり、水質の浄化、魚の産卵場としても重要な役割を果たしているヨシ群落は、開発のなかで激減してきました。県の条例は、保全に役立つものになるかどうか、注目されています。

 条例は、琵琶湖とその周辺に生育しているヨシやマコモ、ヤナギ、ハンノキなど一体となった群落を、県と市町村で保全しようというものです。「ヨシ群落保全区域」「保全地区」「保護地区」「普通地域」にわけて、それぞれ対策をとることにしています。

 県民は、保全に支障をおよぼす行為をしないようつとめること、事業者は、事業活動にあたって保全に配慮し、県、市町村の施策に協力することを、また県は保全について啓発することとしています。

 「保全地域」での建築物の新増改築や水面の埋め立て、干拓、立木の伐採、「保護地区」では、これらに加えて竹木の植栽や動力船、車両の使用、物品の集積・貯蔵などが知事の許可を受けなければなりません。

 貴重種ではない植物を対象に、環境保全に重要な役割をはたしていると認めた条例は全国で例がありません。県では、新年度予算に保全事業費四千八百万円を計上しています。

 こうした条例が必要とされるのは、1953年には260ヘクタールもあったヨシ群落が、90年には120ヘクタールにまで半減している事情があります。

 その原因の多くは、国の琵琶湖総合開発にともなうものです。県のリゾート開発で破壊に直面しているところもあります。条例では、国、自治体のすすめる開発について知事の許可は必要なく、協議のみとしており、実効性が危ぶまれています。