知事選の中で新幹線新駅の建設という話が浮上してきて、県民を驚かせています。新幹線新駅などいらない。これは8年前の知事選で、はっきりと決着がついた問題です。県民の審判を無視して、県民の暮らしと福祉、教育に使うべき県民の税金を無駄な大型事業に投入するという政治を県民はけっして許さないでしょう。 この問題でも、 自民・公明の候補と前民主議員の候補には差がなく、新駅むしかえし組対、無駄遣い県政は許さない県民と日本共産党という2つの流れのたたかいであることが明らかです。
新駅は必要?
今回の知事選で、最初に新幹線新駅に「再挑戦する」といったのは、その嘉田知事の後継者だという前民主党議員の三日月大造氏です。
三日月氏は、JR西日本の出身で、民主党政権下で国土交通副大臣をつとめ、交通問題の政策集団に所属。JR総連から1億円を超える政治献金をうけ、その一部は違法献金だという指摘を受けました。
また自民・公明が推す小鑓隆文氏も「新幹線新駅は必要だ」と主張しています。
小鑓氏は、元官僚として「アベノミクスの作成にかかわってきた」と述べています。安倍首相の経済政策「アベノミクス」は露骨な大企業優遇政策です。県民は、消費税の大増税、社会保障の改悪、ガソリンや食料品の値上がり、中小企業には原材料費の高騰がのしかかっています。
2氏が新駅に賛成するのは、こうした経歴だけではありません。自民、公明、民主が「税と社会保障の一体改革」といって、消費税大増税と社会保障の大改悪とともに大型公共事業を解禁した「3党合意」が根底にあるからです。2氏は、考え方も、政策でも、まったく違いはありません。
県民の批判に
自民・公明・民主の「3党合意」以後、北陸新幹線など整備新幹線計画が復活し、リニア中央新幹線計画など、無駄で無謀な超大型事業がいっせいに動き始めました。
しかし新幹線新駅に反対する世論は強く、三日月、小鑓両氏とも、有権者から反発をかい、2氏とも、前提条件があるといって「県民の声を聞いて」を加える修正を図り、この問題に触れないようにして争点隠しに躍起です。
とくに三日月氏は、「嘉田知事の後継といいながら新駅か」と皮肉られ、嘉田知事の応援という一枚看板も剥げ落ちてしまいました。
負担と不便は変わらない
明るい滋賀県政をつくる会と日本共産党推薦の坪田いくお候補は当初から、新駅を建設しようという計画は巨額の地元負担がのしかかり、また県内の新幹線路線は在来線と遠く離れているために、新駅がどこにできようと、県内の交通の利便性が増すことはないという事情は動かないと主張してきました。
本来、JRが負担すべき建設費を、県や地元自治体が負担することや、無駄な大型事業に県民の税金を投入する県政などごめんです。
「県内一の福祉のまち」を誇った栗東は、新幹線新駅に手を出して、あっというまに財政難に陥り、福祉はずたずたにされました。いちばん被害を受けるのは、建設予定地に名乗りをあげた自治体の住民と県民です。
知事が努力すべきは
知事の仕事は、交通政策でいえば、どこに住んでいても、安全で快適な暮らしの足が確保されることです。
強い風が吹くたびにストップしてしまう湖西線の防風対策や、草津線の複線化、駅のバリアフリー、エレベーターやエスカレーター、安全で便利な在来線、暮らしの足の地域バスを守ること。これこそ、知事がとりくむべき仕事です。
8年前の選択は
8年前の知事選で争われた新幹線新駅は、栗東で計画されていました。
この計画は、
- 駅舎建設だけで240億円もの巨額の地元負担とJRが1円も負担しない
- 新駅には「のぞみ」は停車せず、列車すれ違いのための施設にしかならない
- 栗東新駅と接続する在来線は、単線の草津線手原駅で、米原駅や京都まで在来線で行く方が便利
- 新駅の周辺は農地で、周辺開発に1000億円以上が必要
- 地元負担を起債(借金)でまかなうことは、違法で認められない
- 新駅推進の組織が県民募金を訴えても1円も集まらなかったほど、だれも新駅の必要性を認めていない――などでした。
背景には、暮らしや福祉、教育費を削減する県政があり、「県民の税金は県民のために使え」という強い世論と運動があったことは、いうまでもありません。
県民は「新駅建設の是非は県民投票で」と、住民投票条例を求める直接請求運動をおこしました。
ところが県議会は請求を否決。賛成したのは日本共産党だけでした。県民投票の条例に反対した理由は、「県民には判断する能力がない」という、ひどいものでした。
どれほど無茶をやっても
当時の現職知事は、知事選の争点としないよう、選挙直前に起工式を強行しました。しかしこれは、逆に県民の批判を浴び、現職は知事選で落選。嘉田由紀子知事が初当選し、その後、紆余曲折はあったものの、新駅誘致契約は破棄されました。
4年前の知事選でも、嘉田知事は大量得票して再選されました。新幹線栗東新駅の中止は、明確に県民の支持を得たものです。
なぜ嘉田知事が・・・
「その嘉田知事の後継者の三日月氏が新駅を言うのか」という疑問が寄せられています。
付け加えていえば、新駅をふたたび言い出したのは嘉田知事自身です。
2012年8月に中部圏知事会議で「リニアが開通すれば新駅が必要」と言い、県民から猛反発を受けて、直ちに撤回したのが嘉田氏です。
もともと嘉田氏は新駅に反対ではありませんでした。8年前の知事選で、当初の公約は「新駅は凍結」でした。しかし「凍結」とは何か。「いつか解けるのか」という疑問がわきます。これではどうするのか、まったくわからない。ところが選挙をやってみると、県民の「中止しかない」という怒りの強さは明確でした。それで嘉田氏の陣営は、選挙終盤で「中止」に変えたのです。
中止に追い込んだ力は
嘉田氏が、三日月氏の新幹線政策を認めたのは、「主張する人が変われば許されるかもしれない」という思いかもしれません。
嘉田氏は、「中止」を公約して知事になったものの、JR社長に契約解消を断られ、県議会で自民党から「契約を破棄すれば違約金を取られるぞ」と脅しも受け、何度も屈しそうになりました。「公約したのは、限りなく中止に近い凍結」だった、というのは、このころの議会答弁です。
そのとき、選挙の審判で政策変更しても損害賠償の責任はないという最高裁判例を示し、またJRに寄付する事業で起債をすることは地方財政法に違反するという裁判を起こし、最高裁で勝利判決をかちとって、中止へ大きく背中を押したのは、県民の運動と日本共産党県議団でした。
この経過は、嘉田知事の著書『知事には何ができるか』(風媒社刊)に、そっけなく書かれていますが、決定的に情勢を動かしたのは、この県民とともに頑張る日本共産党の存在でした。
この知事選の選択は
この知事選で、住民の利益を第一とする日本共産党推薦の坪田いくお候補への投票は、公約に責任を負うという、あたりまえのことを守らせる審判であり、大型事業に県民の税金を投入する政治へのきっぱりとした審判でもあります。
そのことはいまの安倍暴走政治に審判を下し、県民が第一の県政をつくるということと同じです。私たちは、知事選が県政への審判であるとともに、安倍暴走内閣にノーの審判を下す、「2つの選択」が問われていることを訴えています。新幹線新駅問題は、その典型的な問題の一つです。